貝ヶ森皮膚科

「銀屑病経方治療心法」 張英棟

 銀屑病は乾癬のことです。

これまで中医師のほとんどが、乾癬の主要な原因を血熱と考え、血熱論治から治療を行うことが万古不易の定石とされています。

 しかし、実際にはそれでは改善しない人も多く、数多くの臨床実践の中で筆者は乾癬の皮疹部では発汗が見られないことに気づきました。それをきっかけに到達した筆者の考えは、乾癬は肌表の寒邪によって陽気が肌表に到達できずに鬱滞することで生じるというものです。汗がかけないことを代償するために乾癬の皮疹が出現していると考えます。熱は陽気が鬱滞することによって生じているのであり、治療は清熱ではなく、陽気を温通させることを主体とします。

 この本には陽気を温通させることによって治癒した症例が多数紹介されており、とても説得力があります。以下に特に重要なポイントを紹介します。

 

治療の目標は「正汗」

陽気が肌表に到達したことの目安は汗です。

「正汗」という、全身にうっすらと汗をかく状態が一定時間以上続くのを目標とします。

 

広汗法

 基本的には経方に基づいた、麻黄・桂枝などで解表する「汗法」が治療の中心になります。

しかし、裏熱が盛んな場合には白虎加人参湯や大承気湯で清熱すれば発汗して症状が改善することがありますし、小陽に邪がある場合には小柴胡湯などで小陽を和解して陰陽が調和すれば発汗して症状が改善することがあります。

つまり正汗を達成するためには、状況によっては解表法以外の方法が適切な事も多く、筆者は「正汗」を得る方法を全て包括する概念として「広汗法」を提唱しています。「正汗」を得るためには弁証論治に従えば、別に解表薬だけにこだわる必要はないということです。

 

四多

 「正汗」を得るために、漢方薬の他に、

  ①多く日に当たる

  ②多く運動する

  ③多く着る

  ④多く辛いものや温めるものを食べる

   ことが発汗を助けるとして「四多」として患者にすすめています。

 

有病不治、常得中医

 陽気を肌表に到達させるためには、清熱薬の使用はむしろマイナスに作用します。つまり、患者の病態によってはむやみに清熱剤を使うと薬毒になってしまう可能性があります。

「有病不治、常得中医」という言葉があります。病があって治療を受けないのは、それだけで並の医者の治療を受けるのに相当するという意味です。患者の自然治癒力は並の医者にかかるのに相当するというのは、なかなか耳に痛い言葉です。

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